作品紹介
1983年のオーストリア映画。1980年にオーストリアでヴェルナー・クニーセルが実際に起こした殺人事件を元に再現されている。
公開当時、オーストリアでは1週間で上映打ち切り、ヨーロッパ各地でも上映禁止となりアメリカではXXX指定を受け配給会社が逃げる等いわくつきの作品です。
日本では「鮮血と絶叫のメロディー/引き裂かれた夜」というタイトルでビデオリリースされ2020年に全国劇場公開(R15)またDVD化されている。
監督をしたジェラルド・カーグルは製作費を自費負担し全財産を失って多額の負債を抱えてしまい、これ以降長編映画を撮っていない。狂人K.を熱演したのは「U・ボート」(81)のアーウィン・レダー。
撮影・編集は「タンゴ」(81)でアカデミー賞最優秀短編アニメ賞受賞、映像の魔術師ズビグニェフ・リプチンスキ。音楽は元タンジェリン・ドリームのクラウス・シュルツが担当した。
監督:ジェラルド・カーグル 撮影・編集:ズビグニェフ・リプチンスキ 音楽:クラウス・シュルツ
キャスト:アーウィン・レダー シルヴィア・ラベンレイター エディオット・ロゼット ルドルフ・ゲッツ
映画のあらすじ(ネタバレあり)
道を歩いている男K。ある一軒家を選びノックすると出てきた老婆に「撃ちますよ」と言って発砲。彼女は死亡しKは逮捕される。
Kはなぜ殺人を犯したのだろうか?自分の異常性を訴えますが、医師はそれを認めず、Kはサディストの傾向はあるが精神異常ではない。それが医師の判断でした。
Kがこのようになってしまった原因は過去の生い立ちにあり27歳の時に老婆を殺害し、そして10年近い刑期が終わりに近づき仮出所が許されようとしています。
仮出所の日、外に出たKが思ったことは次は捕まらないということです。
コーヒースタンドに立ち寄り、そこにいた女性2人に興味を持ちますがここでは目立つ事と準備が必要と思い店を出ます。
タクシーに乗ると女性ドライバーを襲うという衝動を抑えきれず、靴紐を外して首を絞めようとチャンスを狙っていましたがドライバーに気づかれてしまい、カバンも持たずに森へ飛び出し走って逃げていきます。
その後一軒の屋敷に目を付けます。
人の気配がせず空き家かもと思いガラスを割って侵入すると、人が住んでいる気配がありました。興奮したKは探索していると車いすに乗った青年が現れ「パパ?」と声をかけてきます。その後、外で車の音がしました。
どうやらこの家の母親と娘が帰って来たようです。
胸を高鳴らせ隠れるK.。そこへ小さな犬がKのところへやってきました。吠えるわけでもなくただただ動き回っているだけ。娘は2階のバスタブへ湯を入れ始め、青年は母親に「パパがいるよ」と話しますが取り合ってくれません。
父親は昔に亡くなっているからです。
動き出すK。車いすを蹴飛ばし息子を転がす。娘を捕まえてドアノブに片足を縛りつけます。母親に襲い掛かり首を絞めますが、なかなか思い通りにはいかずKは次第に疲れて座ってしまいます。
歩けない息子を腕の力だけで2階へ行き、娘は近くにあったナイフを口にくわえます。突然なり始めた電話の音に驚き焦りKは立ち上がり、2階にいた息子を見つけると首を絞め、バスタブに顔を沈め溺死させてしまいます。
「計画が早すぎる。台無しだ。もっとドラマチックになるはずだった」焦り苛立つK。
放置していた母親のところへ戻るが全く動かず、娘から母親は病気であり台所に薬があると聞き、慌てて薬を取りに行き母親に大量の薬を口に押し込みますが息を吹き返しませんでした。
残ったのは娘だけ。突然室内の灯りが消え、混乱に乗じて隠れます。マッチの灯りで探すK。隙を見て逃げようとしますが物音を立ててしまいKに気づかれます。
なんとか屋外に出た娘ですがトンネルのような通路で捕まりナイフで何度も刺され死んでしまいます。血まみれの死体を抱きそのまま眠ってしまうK。
目覚めたK。時間をかけて家族を苦しめたかったが3人とも死んでしまった。死体を車に積み、次に獲物にそれを見せて恐怖を与えてから殺そうと考えます。
血まみれの服を脱ぎ台所で血を洗い流し、適当にそこにあった服を着て屋敷を後にします。
興奮し、次の獲物の事を考えていて焦ってしまい車の事故を起こしてしまうK。「出てきなさい!」と相手に詰め寄られるうちにパニックになり、大声で叫ぶとそのまま走り逃げてしまいます。
向かった先は昨日行ったコーヒースタンド。昨日と同じメンバーがいました。目を付けていた女性2人がいたことに喜びどうやろうか考えながらソーセージを食べるK。
様子のおかしなKに店員は警察を呼びます。Kは車の中にいる犬にソーセージを持っていって食べさせます。そこへ警察が現れ、店員や店にいた人たちの前で車のトランクを開かれてしまうのでした。
その後逮捕されKは終身刑を言い渡されます。脱獄を試みたそうですが失敗に終わったそうです。
感想(ネタバレあり)
あらすじだけ読んでみると何とも間抜けな殺人犯に見えてしまいますが、殺人という衝動を抑えきれない心情を役者の演技・カメラワークで良く見せてくれます。
カメラワークというか見せ方が特に好みで外の映像で俯瞰的に撮られているシーンなんかは実際に起こった事件という事をわかっているのであながちドキュメンタリーの映像のようでとてもリアルの感じました。
リアルというと冒頭の精神鑑定のところや生い立ちを語る場面の作りが個人的には良く出来ていてKの立場について良く理解できこの映画にうまく入り込めるテクニックなのかと思います。
行き当たりばったりなKの行動ですが実際に起こった事件・殺人犯ということは重々承知してるのですが、なんかすごく人間臭いなぁと思ってしまうんですよ。計画通り行きたいのに上手くいかず、タクシーの運転手にはすぐに気づかれたりそのまま逃げて見つけた屋敷でもまた行き当たりばったり・・・。変に親近感覚えてしまうのはやめときましょう。
感想の最後に実際に起こった事件のこの犯人がまだ生きて牢獄にいるのが想像すると怖いです。
まとめ
「アングスト/不安」古い作品ですが映像はとても凝っていて見ごたえがあります。殺人シーンでもそこまでスプラッターな感じもないのでホラー苦手な人も楽しめるのではないかと思いますので良ければご覧ください!
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